ISURU cocon<br>ベビーベッドが<br>できるまで

ISURU cocon
ベビーベッドが
できるまで

これまでにないベビーベッドで、
世代を超えたストーリーを描く。

ISURU coconのベビーベッドは、ここ広島県安芸郡熊野町で産声をあげました。完成形ができるまで、約1年。中でも、いちばん長い時間を費やしたのは構想だったといいます。つくり手の高橋さんが、まず始めたのは世界中の製品のリサーチでした。「どの製品も約2年で役割を終えてしまう。そんなベビーベッドの常識を変えたい」。そんな思いを抱き、考え抜き、たどり着いた答えが「一生を共にするベビーベッド」でした。0歳から寄り添い、子供から青年へ、そして大人になり、やがて新しい命を育むまでを見守ってくれる存在。そのとき、親から子へと受け継がれていく。世代を超えたストーリーを描く。それが、ISURU coconのコンセプトです。

丸いかたちにしたのは、
暮らしの真ん中に置いてほしいから。

四角いベビーベッドは、機能的で使いやすいけれど、まるでテトリスのように部屋の隅に収められる。高橋さんは、その光景を不思議に感じていたそう。「赤ちゃんが生まれて、育っていくことは奇跡だし、とても素晴らしいこと。だから、ベビーベッドは暮らしの真ん中に置いてほしい」。家族や親せき、友人たちの輪が自然にできたらいいな。

そんな発想から、丸みを帯びたかたちに。さらに、ダイニングテーブルの隣に、ソファの側に、風がそよぐ窓際に。暮らしのどこに置いても、美しい風景が描けるように。そんな思いでデザインをしています。

木や自然に敬意を払い、
永く愛されるものをつくる。

木材の寿命は、その樹齢と同じぐらいで、100年から200年ほど。「ゆえに職人は木や自然への敬意を払い、長く愛される家具をつくる責任がある」と高橋さん。「デンマークとイギリスの世界最高峰の工房を訪問したことがあって。彼らは森を所有しているんです。木を植えて、育て、『わたしたちの森』と共にものづくりをする。そんな考え方が単純にかっこ良かった」。だからこそ、広島に工房を構えたとき、地元の材料を使うことを決めたといいます。

もちろん、ISURU coconにも広島産のクリとブナの木が使われています。白っぽい色が、年月を経て、飴色に。その変化も楽しみのひとつです。

大切に手をかけられ、
受け継がれていく、「さしものかぐ」。

くぎなどを使わずに木と木を組み合わせてつくる指物(さしもの)という技術。ISURU coconのベビーベッドも、この日本古来の製法からつくられます。その大きな特徴は、修復しやすいということ。家具は生活の道具。日々使っていれば、不具合が生じることもあります。木組みが緩めば締め直し、座面が傷つけば削りをかける。大切に手をかけながら、親から子へ、子から孫へと世代を超えて、永く愛されていく。そんな風景を思い描いているのです。

「完成」を決めるのは、
つくり手の研ぎ澄まされた感覚。

「仕上げは、手で触り、目で確認する。最後は職人の美意識です」。工房では、正確に仕上げるために機械で加工する工程がいくつもあります。しかし、「仕上げは、自分自身の感覚を信じる」と高橋さんは語ります。美しい直線を描いているか。滑らかで気持ちよい手触りになっているか。木はそれぞれ、木目はもちろん、手応えも違います。立体物である家具は、さまざまな角度からかたちを確認する必要もある。一つひとつのベッドと向き合いながら、五感を使い、納得のいく美しさを求めて制作しています。つくり手の研ぎ澄まされた感覚から、世界にひとつのベビーベッドが生まれる。それが、手仕事の醍醐味でもあるのです。

暮らしの舞台をつくり、家族の物語を紡ぐベビーベッドに。

家具は人に使われて、初めて「完成形」になります。例えば、椅子なら誰かが座ったときが、本来の姿です。「だから、家具はあくまでも脇役。それらが集まって、暮らしの『舞台』をつくり、家族の風景が生まれるんです」と高橋さん。ISURU coconのベビーベッドも、人生と共に歩み、成長し、歳を重ねていきます。「このベッドからどんな物語が生まれるのか。つくり手としては、それが楽しみで仕方ないんです」。

さしものかぐたかはし

高橋 雄二

1978年大分県生まれ。2010年、広島県熊野町にてさしものかぐたかはしを設立。日本の古くからある「指物(さしもの)」の木工技術と広島の木材を使いオリジナルデザインの家具や小物を制作。くらしの参考室(visonくるみの木 三重県)湖のスコーレ(滋賀)など店舗や宿泊施設の特注家具を担当。

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