使用期間が短いベビーベッド。レンタルが普及しているなか、敢えてISURUではベビーベッドの開発を決めていました。
というのも、ベビーベッドを選ぼうとしたとき、機能性に優れてはいるものの、純粋に置きたいと思えるものに出会えなかったからです。「今しか使わないからとりあえず」ではなく、「置きたい」と選んでもらえるベビーベッドにきちんと向き合いたかったんです。
期間も用途も限定された家具を「置きたい」ものにするという難題に共に向き合って頂いたのは、さしものかぐたかはしの高橋雄二さんでした。
さしものかぐたかはしとは
指物師 高橋 雄二が、2010年より広島県の熊野町にてスタートした家具工房。木の家具や小物のデザインから制作、販売までを一貫して行っており、現在は、スタッフと共に作るオリジナル製品や高橋個人が受注するオーダー家具を中心に制作を行っている。家具作りのほか、敷地内のギャラリー chigiri では、暮らしにまつわる展示、お話会など各種イベントを行っている。
共同開発のきっかけ
ISURUの構想を練る中、さしものかぐたかはしの話題は上がりました。さしものかぐたかはしの家具は指物(さしもの)という伝統的な木組みの手法で、くぎを使わずに組み立てられています。
木と向き合った手仕事による家具の佇まい、高橋さんの木への敬意、「永く使って欲しい」という理念に触れるほど、ベビーベッドに新しい形を見出すことができるような気がしました。
そして驚くべきことに、お布団の監修を努める丹羽さんが高橋さんと以前に家具の共同開発をしていたことがわかり、丹羽さんを通じてお声をかけさせて頂くことができました。
まるで奇跡のような巡り合わせです。
丹羽さんと共同開発された、futon sofa │ ふとんのソファ
形が見せてくれる風景
「世代を超えるほど永く使い続けられるものにしたい」というさしものかぐたかはしの理念に基き半年以上かけて構想してもらったのは、ベビーベッドとしての役目を終えても椅子の役割を与えることができるものでした。赤ちゃんを包み込むようにまるくて優しい形をしてます。
初めてサンプル模型を見たとき、あまりに素敵で素直に喜んでしまいました。一方で、既存の長方形のベビーベッドから形を大きく変えることは難しい判断でした。市販のベビー布団が使えなくなるし、丸い形のベビー布団は量産がとても難しいんです。
でもこの形に込められた「暮らしの中心に置いて欲しい」という気持ちや、「赤ちゃんをみんなが囲む風景」から、ISURUの語源にもなった「愛する」ことが形になったベッドだと感じたんです。
課題となったまるいお布団は丹羽ふとん店さんによる手仕事の制作へ切り替え、高橋さんの表現を最大限に活かすことにしました。
素材には工房がある広島のクリとブナが使われています。木肌の手触りや質感など細部にまで妥協なく仕上げ、組み立て式ではなく最後まで組み立てた完成品をお届けすることとなりました。
ゆったりと座れる座面や赤ちゃんとお世話する人を観察して着想を得た高さなど、美しい佇まいを届いたその日から楽しんでいただけます。
永く大切に
広島にある「さしものかぐたかはし」を訪れたときのこと。
家具、工房、ショールーム、古いFIATのPANDA、自家焙煎のおいしい珈琲、高橋さんの周りの空間や道具はどれも大切に扱われていました。「永く大切に」という精神は高橋さんの人柄でもあり、だからこそ一生を共にできる形に至ることができたのだと思います。本当に、世界一美しいベビーベッドです。
このベビーベッドで眠った赤ちゃんがいつか成長したとき。椅子として、棚として、そこにcoconがあったのなら。共にすごした時間だけ、木の家具は物語を刻んでいきます。
永く暮らしを彩る新しいベビーベッドができました。
さしものかぐたかはし
高橋 雄二
1978年大分県生まれ。2010年、広島県熊野町にてさしものかぐたかはしを設立。日本の古くからある「指物(さしもの)」の木工技術と広島の木材を使いオリジナルデザインの家具や小物を制作。くらしの参考室(visonくるみの木 三重県)湖のスコーレ(滋賀)など店舗や宿泊施設の特注家具を担当。